「そんな顔しないでよ、一緒に対戦出来ないゲームも面白いって」

「………」

「もう二つ目の街まで行っちゃったんだけどさ、まだ序盤だし分かりやすいから後ろで見ててよ」

黙り込んでしまった龍児をさておき、豪星は途中まで進めていたゲームを再開させた。

龍児は画面に映された勇者の名前が自分のものだという事に気付くと一瞬呆気をとられたが、また直ぐ、むすっと黙り込んでしまう。

途中から始めたので内容の分からない龍児にきちんと、何があって、どうなって、こうなっているのかというのを、店の買い物をしながら勝手に説明していく。

それでも黙り込んでいた龍児だったが、勇者が街の外に出て、戦いを始めた辺りから顕著に反応を見せ始めた。

出てくるモンスターを、色鮮やかな魔法や剣捌きで倒していく様を、いつの間にか皺の取れた顔でじっと見入っている。

その内すねていた事も忘れ、今自分達は何をして、何処に向かっているのかを自ら尋ねるようになった。

「今ね、右上にある山のダンジョンに向かってる所なんだけど」

「だんじょんってなんだ？」

「モンスターがいっぱい出るモンスターのおうちみたいなところ、一番奥にボスがいるんだ」

「ぼすってなんだ？」

「ボスっていうのはモンスターの親だね、親にも親がいて、ラスボスって言うんだけど、そいつを倒せばこのゲームが終わるんだよ」

「へえ…」

「で、山のダンジョンに入るのに鍵が必要でさ、その鍵を手に入れる為に山の手前にある湖で謎解きしないといけないんだけど、これが結構難しかった覚えがあってさ…あ、そうだ、これ見ててくれる？１９ページね」

両手がふさがっている豪星の代わりに、このゲームと一緒に購入しておいた攻略の本を龍児に投げて寄越す。慌てて受け取った龍児が、豪星の指示したページを探して開いた。

「見ながらやってると失敗するかもしれないから、俺がお願いしたら、そのページの…此処に書いてある右か左を教えてね」

「お、おう」

自信無さげに龍児が頷くと共に、目的の場所に勇者が辿り着いた。早速始まった制限時間付きの謎解きアクションに、声を上げて「どっち！？」と龍児に訪ねる。

２秒くらい後に、龍児が「左！」と叫ぶ。

「次は！」

「みぎ！」

「つぎ！」

「みぎ！」

「つぎ！」

「ひだり！」

「ここはなし、なし…あ、最後！最後どっち！？」

「み…っ、あ、違う、ひだり！」

一瞬つられて間違えそうになったが、直ぐに正解の答えに滑り込んだ。すると、湖の妖精が現れ、長ったらしい説明を流したあと鍵を地面に落としていった。「やったぁ！」と、隣の龍児に振り返る

「一発だったね！ありがとう龍児君！」

「…お、おう」

ちょっと照れくさそうに頷いた龍児が、珍しく頬をほんのりと蒸気させた。それから「けっこう、おもしろいな」と口にする。

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