「そのペンギンね、詩織ちゃんが水族館で見てたら惚れ込んじゃったらしくて、どうしてもって譲ってもらおうとしたら飼育員さんに断固反対されちゃって、仕方ないから水族館ごと買ったって言ってた」

「え……、そんなことできるんですか?」

「元々買おうかどうか迷ってたらしいから、踏み切る切欠が出来たって言ってたよー?」

「いえ、そ、そうじゃなくて」

「うん?傘下の話?」

さんか…。さんかって傘の下って書くアレだよな。けど、傘の下がどうとかそういう話してないよな今。

けど、こんなさらっと、寂れたアパートで出てくる単語でもないよな。

「…あの、今更ですけど、猫汰さんのご実家って相当お金持ちなんですか…?」

「え?そんなでもないよ?ちょっと色々売ってるだけ、神崎ホールディングスってやつ」

「………」

神崎ホールディングスって、数多の人気番組の間に高確率でCMを差し込む、あの神崎ホールディングスだよな。…ああ、通りで金持ってる訳だ。

とんでもない世界の片鱗に触れ、遠い目をする豪星に気付かず、相変わらず猫汰はペンギンの話題に夢中だ。

「それでね、そのペンギン脱走癖があるみたいでさ、詩織ちゃんがすっごく手を焼いてるの、なんか却って嬉しそうだったけどね、で、此処からが本題なんだけど、そのペンギン、名前がおそまつって言うの、俺はまっちゃんって呼んでる」

同じ名前を持つ男が、ペンギンの名前を聞いた途端ぶふぉ!と飲んでいた茶を吹きだした。片手を口にあて、げほげほ!と盛大に咽ている。

「この前見ちゃったんだけど、詩織ちゃん、まっちゃん膝に乗せながら、ペンギンだったら金でかえるのに…って、言いながら超色っぽい目でまっちゃんガン見してたよ?」

「…へ、へぇー、そうなんだー…」

咽た喉を掴みながら身震いを起こす父親に、猫汰が突然、ずいっと近づいた。

「ね、お父様、詩織ちゃんとお父様の間に何があったかやっぱり聞いちゃ駄目?面白そうだから超聞きたいんだけどー」

「息子の小学生の時の写真見せるから見逃してくれない?」

「おっけー!!」

「おい」

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