「ねぇ、猫ちゃん、ほんっとに言わないでね?」

「どーかなー、だってお父様、見せるばっかりでちっとも写真くれないんだもーん」

「あれ、ばれちゃった?」

「えへへ?俺のおくちはおとーさま次第だよね?」

「交渉上手め…もー、仕方ないなぁ」

父親が懐から豪星の、猫汰に度々見せている例の写真を取り出す。て、おい、なんでそんな所から出てくるんだ。

ソレを父親が猫汰に渡すと、高速で飛びついた猫汰が「しゃあ!!」と雄叫びを上げて飛び跳ねた。嬉しそうで何よりだけど、当人なので複雑です。

「お兄さん、講座を開けるくらい料理が上手なんですか?」

なんとなく話題を逸らしたくて尋ねると、大事そうに写真を鞄にしまい込んだ猫汰が「うんそうだよー」と頷いた。

「詩織ちゃん、調理師と栄養士の免許持ってるの、仕事と合わせてしょっちゅう料理講座開いててね、毎回予約が殺到してるんだー」

「へぇ、凄いですね」

「何を隠そう、俺が料理好きなのも詩織ちゃんの影響です!」

「………」

何て余計な事をしてくれたんだ。もう取り返しがつかないじゃないか。

「この前なんかねー、水族館の小魚の大群ショーに合わせて出張講座開催したんだってさ」

「水族館で料理講座って、何だかシュールですね」

「ダーリンもそう思う?俺もそう思ったから聞いた時爆笑しちゃったよー!何時も通り盛況だったみたいだけどね?」

けたけた思い出し笑いをしていた猫汰だったが、不意に手を叩き「そういえば」と、顔を逸らしてちらりと父親の方を見た。

「その水族館から最近ペンギンを譲ってもらって、今実家で飼ってるの」

「…ペンギン?あれ?ペンギンって家で飼えるんですか?」

「うん、設備と飼育環境があれば飼えるよ、今まだ寒いけど実家のクーラーついてる、ペンギンでも食べられるおやつぼりぼり食べてたよ」

え?ペンギン用のおやつなんてあるの?あれかな、犬のケーキみたいなものかな…。

「今ってそんなのものも売ってるんですね…」

「ううん、特注」

「………」

今、さらっと凄い事を言われたような。

「ちょっと変わった顔したペンギンなの、そんな訳無いのにへらへら笑ってるように見えるんだよねぇ」

動物の表情は見分けにくいというので、恐らく生まれた時から笑っているような顔をしたペンギンなんだろう。そんなペンギン全く想像がつかないけど。

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