深くも浅くも無い快眠を叩き起こしたのは矢張り龍児だった。

少し眠そうな、しかし興奮を隠しきれない顔で、「起きろ!」とべしべし身体を布団の上から叩かれる。「分かった分かった」と呟き、軽く伸びをしてから、既に身支度を終えている龍児の後を追う。

まだ随分と早い時間だったので、車は頼まず徒歩で行くことにした。

しかし、それでも時間が潰しきれなかったらしく、目的のこじんまりとした玩具屋は到着しても閉店したままだった。戻るのも中途半端なので、食べなかった朝ごはんで時間を潰す事を思いつく。

「龍児君、お店開くまで何か食べてようか」

提案すると龍児が思い切り首を振った。しかし、こんな時間に開いている店など限られているので、手っ取り早くハンバーガーでも食べに行くことにした。

それでいいかと尋ねれば、若干興奮した様子の龍児が「行ったことない!」と、珍しい形の賛同を示した。

「そっか、じゃあいろんな意味で食い初めだね」

「知ってるぞそれ!エンギがイイっていうんだろ!」

身体的にはどうなんだろうなぁ。それと、意味を本当に分かっているのだろうか、

と思ったが、楽しそうなので突っ込まないでおく。

晦日だろうが元旦だろうが24時間休みません、をガラスに張り付けた店先で一度足を止め、ちょっとは休んだ方が、みたいな、多少の黒さを堪能した後自動ドアを潜って中に入った。

他に行くところが無いのか、既に店内にはぽつぽつと客が座ったり待機していたりして、カウンターの向こうでは帽子をかぶった店員が朝から忙しそうに動き回っていた。

小さな列に龍児と並び、数分した所で注文を聞かれた。豪星はハンバーガーを二つ、コーラをひとつ、龍児の注文は、自分でさせず、まず聞いた。

指折り数えているが、多分桁が十は違うだろうと見越して「お年玉使いきっちゃ駄目だよ?」と釘を刺しておく。

うぐ、と唸った龍児が、ぷるぷると震えた後に「じゅっこ」とカウンターのお姉さんに数を伝えた。

それでも向こうにはかなりの数だったのか、きょろきょろと、お姉さんがどこかに引率でも居るのかと辺りを見渡していた。ちょっと笑える光景だ。

此処で食べていきますと告げてから、大分待たされたあとにトレーにてんこもりにされたハンバーガーを受け取った。

見ているだけで胸やけがしそうだが、龍児の顔はといえば至極嬉しそうだ。

適当な席について手を合わせると、豪星は山からふたつ自分の分を取り除いた。山の向こうで、既に同じ二つ分が消えている事に気付く。相変わらずの食欲だ。

この分だと須藤の家は正月の馳走が余る事が無いだろう。むしろ足りてないんじゃないか?合掌。

一つ食べ終えて、袋を畳んだ後何となしに「何買うの?」と尋ねた。すると、屑山の向こう側で、さっと顔を上げた龍児が、即座に「お前と対戦できるやつ!」と叫んだ。

ええ、また?と苦笑する。

「偶にはRPG買おうよ、面白いのたくさんあるよ?俺そっちがいいよ」

「いやだ、一人でやるやつなんて、どうやるか分からん」

「俺が隣で教えてあげるって」

「…正月だけじゃないか」

「いいじゃないか、俺が次に来た時までに進めておいてよ」

「…やだ、お前がいないと、やだ」

最後の一個を食べる手を止め、じと目で睨まれる。その顔には、確かに須藤が言った通り、寂しさとか鬱憤とか、構って欲しいとか、そういう物が詰まっているように見えた。

―――どうしてこんなに懐いてくれたんだろうか、検討もつかない。が、そんな友人が可愛くないかと言われれば、まぁそんな事もなし。

「分かったよ、対戦できる奴にしようね、何が良いかな、パズルも偶には良いよね」

「格闘!」

「飽きたからやだ」

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