クリスマスも年の瀬も元旦も無事に終わったので、明日以降の予定の為須藤に連絡を入れると、龍児の話と世間話を披露された後、何時もの時間に何時もの場所を指定された。

来る二日、予定通りの場所でトラックに回収され、変わりゆく季節を横切りながら須藤の家に向かうと。

「ごうせー!!」

「おわっと!はは、久しぶりだね龍児君」

「おう!」

玄関先でいつも以上に盛大な歓迎を受けた。行事の雰囲気に充てられているのか、龍児のテンションが何時もより明るい。

龍児はやれ凧を揚げようだの、やれ独楽を回そうだの、古臭い遊びを口にしては豪星を誘った。恐らく須藤が教えてくれたのだろう。

やった事が無い訳では無かったし、季節がら楽しそうだと素直に乗って暫く遊んでいると、驚く程早く陽が落ちてしまった。

なんだかんだ、自分も龍児と遊ぶ事が好きだという証拠だろうなと、口には出さず、ぼんやり考える。言う程の事でもないだろう。

今年は宮番をしているのだという須藤は何度か家を空けた後、明らかに酒気を帯びた大変残念な恰好で戻ってきた。

玄関で力尽きた須藤にあらあらと言って沙世が近寄る。このまま玄関で寝かせるのは流石に忍びなかったらしく、もうちょっと頑張って下さいなと、現在励ましている所だ。

それを手伝っていると、急に、ぐるんと上を向いた須藤が、にかっと笑って豪星と龍児に何かを手渡してきた。薄茶色の馴染み無いソレは、この世で一番高い札だ。

「おとしだまだぞー」

「い、いやあのおやじさん、龍児君はともかく俺は貰う理由が…」

「何を言う!一つ屋根の下で同じ釜の飯を食ったお前が俺の家族でないとでも言うのか!」

「まあ血縁上は…寝ちゃったし」

言いたい事だけ言って寝入ってしまった須藤の隣で、「貰っておきなさいな」と沙世が笑う。

「この人嬉しいのよ、お正月に貴方たちと過ごせて、そのお駄賃かもしれないわね、ふふ、私ももちろんうれしいけど」

「そ、そうですか」

「ええ、だからそれで、好きなものでも買ってきなさい、子供の楽しみでしょう?」

そこまで念を押されては貰わない訳にもいかず、棚からの牡丹餅として頂いておいた。

じっと札を眺める龍児と二階の部屋に向かうと、早速、「何に使えばいいんだ」と相談された。

「まあ、好きなものじゃないかな」

「飯」

「…でも良いんだけど」

それだと折角のお年玉がちょっと不憫な気がして、「こういうのはほら、好きなゲームとか」と提案する、と、途端龍児の目が輝いた。

「ゲーム!買う!」

「そっか、じゃあ明日なら開いてる店あるだろうから一緒に買いに行こうね」

「おう!」

今から寝る体制だとはとても思えない輝かしい返事をした後、寝支度を整えて二人布団に入った。

久しぶりに入り込んだ須藤の家の布団は、手入れがしっかり行き届いているのか何時でも陽の匂いがする。

案の定眠れないのか、隣でごそごそと何度も寝返りを打つ音が聞こえた。これは多分朝まで起きてるだろうな、とは思いつつも、付き合う気も無くて、豪星はそうそうに眠りについた。寝つきが何時でも何処でもいいのは長所だと思っている。

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