もごもごマフラーの中に埋もれていた猫汰だったが、暫くした後、もぞもぞ、自分の服の中を漁り始めた。それを見守る豪星に振り返って何かを差し出してくる。掌よりも少し大きな黒い箱だった。

「あけて」と言われたので、言われるまま蓋を開けてみると。

「…うわ!かっこいい!」

中に入っていたのはシンプルなデザインのシルバーチェーンだった。長さから見て首につけるものだろう。

すごく好きなデザインに目が釘づけになっていると、猫汰が不意に中身を持ち上げ「あげる」と一声放った。

「え!?いいんですか!?」

よくみると箱にブランドっぽいロゴも入っている、こんなにかっこよくて高そうなもの、貰っていいのだろうか。

「貰って、これ、ダーリンにあげようと思って持ってきたから、…えと、俺からのプレゼントです、メリークリスマス」

「あ、有難う御座います…!」

プレゼントを手に受け取った時、豪星のテンションは上がりに上がった。しかし、猫汰の首に巻かれたマフラーを見て直ぐに下がる。

こんなに嬉しい物を貰える予定だったならば、もっとマシな物を準備しておけば良かった。そう思っても、あげた後ではどうにもならない話だが。

「あの、なんだか、却ってすみません…」

目を逸らして謝罪をする豪星の顔を、猫汰がじっと見つめる。それから「つけていい?」と脈絡なく尋ねられた。

「はい?」

「だから、ソレ、今から俺がダーリンにつけていい?」

「え?今ですか?別にいいですけど…」

何のきまぐれだろうかと、不思議に思う間もなく、猫汰が豪星の手からソレを掬いあげて豪星の首に触れた。

後ろで留め金がカチリと音を立てる。最中、そういえば、こんな素敵な物が、冴えない自分に果たして似合うのだろうかと考えた。

「…あの、俺、似合います?」

恥ずかしさも込めてはにかむと、未だ首の後ろに手を回していた猫汰が、一瞬、目を見開き―――突然顔を寄せてきた。豪星も目を見開き、身体がびくりと硬直する。

形の良い唇は、数秒の内に豪星との距離を縮め。そして、軽い音を立てながら豪星の唇の直ぐ隣に触れた。

「…だめ」

顔を離した猫汰が、もどかしそうに舌を動かす。

硬直したままの豪星の胸にしがみついて、は、と悩ましげな息をついた。二度顔を摺り寄せ、再び息を吐き、す、と、潤んだ目で豪星を見上げる。

「心臓いたくて、キスできない…っ」

小さく震えた彼の声は、もう一度漏れ落ちた吐息に混ざり、宙に漂い溶けた。

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