全然気にしていなかった所を必死に弁解され返事の気が抜けてしまう。にも関わらず、数分程猫汰は自分の所業を自分で散々なじり、その後、投槍な仕草で再び顔を伏せた。

「も、さいあく、俺今日はいっぱいかっこいいとこ見せたくって色々考えてたのに、あんなとこ見せちゃって、さいあくっ」

猫汰があまりにも悲痛な声で嘆くので、「気にしてませんよ」と思ったままに宥めるが「俺が気にしてるの!」と噛みつかれてしまう。

猫汰は再び項垂れて、頭を抱えるとそのまま黙り込んでしまった。その隣に座り、暫く豪星も無言でいたが、その内猫汰の方を振り向いた。

「あの、猫汰さん、もう一回言いますけど俺は気にしてませんし、それでいいじゃないですか」

「………」

「あ、さっき言ってたツリーってアレですか?もうちょっと近くに行きましょうよ」

「………」

「…うーん」

どうしようかな。流石に会話も成立しないまま二人で座り込んでいるのは気まずい。

次の言葉が見つからないまま、話題に出したばかりのツリーを眺めていると、不意にその輝き方に変化が現れた。

あれ、と目を擦る豪星の視界の中で、更にまた変化が織りなす。ツリーの向こう側、それまでしんと暗く静まりかえっていた一角が突然煌びやかに光り出したのだ。まるで光源の波のようだ。

「うわぁ…!」

風景が一瞬にして光輝く光景に感激し、思わず立ち上がってしまう。隣に居る猫汰の肩を大げさに叩き、はしゃいだ声色で名前を読んだ。

「猫汰さん!猫汰さんってば!」

「…え、な、なに?」

突然テンションを上げた豪星に、吃驚しながら猫汰が応える。その腕を、ぐいとひっぱり立たせた。

「凄い!あれが言ってたイルミネーションですよね!俺あんなに凄いの初めて見ました!も、もうちょっと近くに行きましょう!」

「え、わ…っ」

了承を得ないまま早速向こう側に近づき、ありとあらゆる場所に飾られた催しを目の前で一杯に堪能する。

バスで少し走っただけでこんなにも大仰な仕掛けが展開されていたとは知らなかった。

イルミネーションは良くテレビなどで紹介されているので、大したものを見たことも無い癖に身近な物のつもりでいたが、実際に見る実物はなんて、格別に綺麗なんだろうか。

すごいすごい!と浮かれた声を上げ続ける豪星の服の裾を、猫汰が不意に掴んできた。その拍子にはたと我に返る。

不味い。感動したからといって子供のようにはしゃぎすぎた。…みっともない自分の姿を止めてくれたのだろうか。

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