「これ美味しいですね、なんだろう、林檎みたいな味がする」

「あたりー、シードルは林檎のお酒なんだよ?このお店の人気メニューなの」

「へー、…って、え!これお酒ですか!?」

飲みやすいので随分飲み込んでしまったが、慌ててグラスを宙から下げる。その手を、急に猫汰が掴み「しぃ」と豪星の口に指先を当てた。

「大丈夫だいじょうぶ、強く無いし、平然としてればばれないし、それに初めてでもないしさ?」

ね?と同意を示され、少し考えた後、下げていたグラスの中身を一気に飲みほした。猫汰の言う通りだ、アルコールを多少摂取したなど今更である。

おかわりの水を貰って、日替わりのデザートを全て平らげると、豪星よりも後に食べ終わった猫汰が時計を見ながら「そろそろいこうか」と言って立ち上がった。

「今から駅主催のイルミネーションが始まるの、後20分後位かな?その前に駅中の大きいツリー見に行こうよ」

「分かりました、…あ、その前にお手洗い済ませても良いですか?」

「いいよー」

豪星も立ち上がり、早速手洗い場に向かって用を足しに行った。乾燥機に充てた手を適当に振りながら戻ると、丁度レジで猫汰が会計を済ませていた。

お礼を言うため慌てて駆け寄ろうとしたが、3歩進んだ所でぴたりと足が止まった。

猫汰がおつりを受け取ろうとした時、店員がレシートの後ろに何かを書きこんだのだ。店員は顔を真っ赤にさせ、ソレをこっそり猫汰に渡そうとしている。

よくみると、レジを打った店員は初めの注文を取った女性だった。店で客にアプローチをかけるとは中々に大胆だなと思う。

しかし近づきにくくなってしまった。どうしよう。そんな事を考えながら足踏みを何回もしていた豪星の目の前で、猫汰がゆっくりとソレを受け取り―――突然、真っ二つに破り裂いた。

それを見ていた誰かが、あ、と声を上げる。その最中にも、猫汰は二つを四つに、四つを八つに、最後には数も分からない程びりびりにしてそれを床に放った。

最後の一切れが床に落ち切る前「ねぇ」と猫汰が剣呑な声を出す。

「俺さぁ、恋人居るからこういうの困るんだけど、やめてくんない?」

声と比例して顔つきも険しくなっていく猫汰に、店員が染めていた頬を真っ白にさせた。豪星も、その場に茫然と立ち尽くしてしまう。

「ていうかさ、クリスマスだってのに付き合ってくれる彼氏もいねぇの?だったら仕事中にこんなくだらない事してないで休みでも取って男見繕いにいけば?――大体さぁ!!ひとが大事な日ではりきってるってのに、変な邪魔しないでくれる!?」

「ちょ、猫汰さん!」

猫汰が今にも店員に掴みかかりそうだったので、今更我に返って猫汰の言動を割って止める。

豪星の姿を見た瞬間、猫汰がはっと目を開き、顔を真っ青にさせた。

「とりあえず出ましょう」

周りに何度も会釈をしてから、項垂れてしまった猫汰の背を押して店を後にする。

数分歩いて適当な場所に座ると、突然猫汰が顔を上げて豪星に詰め寄ってきた。

「ご、ごめんねダーリン!まさかあんな風に絡んでくるとは思わなくって!ちょっと、頭に血が昇っちゃって…お、俺、すっごいかっこわるいとこ見せちゃった…」

「いや、それは別に…」

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