12月の下旬、丁度クリスマスイブの日、須藤の家から豪星の携帯に電話が掛かってきた。

父親と炬燵でチキンを食べていた時に何事だと思って出た電話からは。

『ごうせぇ……』

「………龍児君?」

散々泣きはらした事を隠さない友人の声が聞こえてきた。何度か尋ね返してみるが、彼の声はそれ以降続く事無く、代わりに何か物が動く音が聞こえてくる。

無言が5秒程続いた後、次に聞こえてきたのは須藤の声だった。何故か少し疲れている様子だ。

もしもし、どうかしたのですか?と今度は須藤に尋ねれば、一層疲れた声で「帰ってきてくれ」と一言告げられた。

何が何だか良く分からなかったのでもう少し補足を頼めば、二の句で、「龍児」の名前が再び出てきた。

『今日はクリスマスだっただろう…』

まあそうですけどと返せば、何かをぐりぐりと掻き毟る音が聞こえてきた。恐らく、須藤が自分の頭でも鷲掴んでかき乱しているのだろう。

『チキンとか、ケーキとかな、いろいろ用意して三人で食ってたんだよ、何か雰囲気も出るかと思ってサンタの恰好とかも用意してな、結論を言えば着れず仕舞いになっちまったが』

想像して少し笑えてしまった。この人は顔に似合わない事を偶にやらかすので時折凄く面白い。

『まあ枕元にプレゼント置いてサンタ信じる歳でも無いじゃねぇか、それは良いんだよ』

いやどうだろう、龍児なら信じそうな気がする。枕元に置かれたプレゼントを抱えて「サンタってホントにいるんだスゲー!」とか言っちゃう気がする。気がするだけかもしれないけど。

『直球にな、聞いたんだよ、今日はクリスマスだからなんか欲しいもんねぇかって、あるなら明日一緒に買いに行こうって、…したらな』

「はい」

『豪星が欲しいって言って、から、急に泣き出したんだ』

「………」

『そっからはもう、喚くわ泣くわで散々だ、泣かせるつもりは無かったんだぞ俺はぁ…、今だって声だけでもと思ってお前に電話かけたのに、さっきから炬燵に入ってでてきやしねぇ』

「ええと、龍児君どうしたんですか…?」

龍児と離れて久しくないがそんな要求をされたのは思うに初めての事だった。

須藤が言うには、鬱憤がたまっているんだろう、との事だった。

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