「って、始業式で宣言してきたよおとーさま!俺とダーリンの愛の学校生活に悪い虫がついちゃいけないもんね!」
半日で終わった学校の帰り、早速今日の出来事を父親に報告した猫汰が、きゃっと笑って豪星に抱き着いた。そっと押し返す元気もなく、なすがまま揺さぶられる。
状況を聞いた父親といえば、先ほどから腹を抱えて床を転がり廻っている。余程ツボに入ったのか、全く置き上がる気配が無い。
「ぶははははは!!!猫ちゃんやばいわ!!すげぇえ!!!ぶはははははは!!」
あとで締めるぞ糞親父。
一頻り笑った後、父親がとんとんとタバコを叩いて中身を取り出そうとしたが、丁度切れてしまったらしく、物足りない顔を浮かべて立ち上がった。
ちょっとタバコ買ってくるねーと言い残し、豪星と猫汰を置いて部屋を出て行く。二人きりになった瞬間、猫汰がもっとくっついてきた。
「ダーリン、これでもっと、ずーーーっと一緒にいられるね?」
「ははははは、…そうですね」
「ダーリンを吃驚させようとおもって、俺、当日までナイショにしておいたんだぁ」
「それはどうもありがとうございます、でも猫汰さん、そういう大事な事はなるべく事前にお伝え下さい、吃驚し過ぎて死ぬかと思いました」
死ぬっていうか、うん、もう死んだんだけどね。主に学校生活が。
「そんなに吃驚しちゃったの?ごめんねぇ、ダーリンがそう言うなら、今度からはちゃんと先に言うね!」
いやうん、今度が無いのが一番なんだけどね。
「あ、じゃあ直ぐに言わないと」
「え?」
「あのねダーリン、俺のおにーちゃんがダーリンの顔を見ておきたいって前から言ってて、今日俺が始業式の後にダーリンの所行くって言ったら、じゃあ僕も行こうかなって言ってたからもしかしたら近くまで来てるかも」
唐突な事態に一瞬頭が真っ白になった。暫く茫然としてから「え?あの、お兄さんが俺にですか?」と反復する。
「そうなの、前から付き合ってるのは言ってたんだけどね、ダーリンが暫く留守にしてた時あったでしょ?あの後くらいから急にダーリンを見せろ紹介しろって言ってて、けど暫く向こうの仕事が忙しくなっちゃって中々機会が合わせられなくて、でも、今日の始業式の後なら都合つけられるって」
「…やっぱり先にそういう事は教えてください、お茶菓子も無いんですけど」
「ご、ごめんね?こっちは内緒にしてた訳じゃなくて言い忘れてて、ほんとに、今度からは気を付けるね?…あ、エンジンの音だ、来たかな?」
豪快なエンジンの駆動音が急にアパートの外から響き渡り、そして止まる。窓を開けた猫汰が音の方向に顔を向け、声を上げた。
「やっぱりそうだ、しおりちゃーん!」
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