瞼の上がちかちかして、ふ、と目を開ける。途端豪星は若干の吐き気と苦みを喉の奥に覚えた。

口を押さえて首を傾げ、原因を思い出そうとして―――ああ、と苦笑する。

多分昨日飲まされた酒の所為だろう、そういえば以前にもこんな風に目が覚めた事を思い出す。

とりあえず新鮮な空気を吸う為窓に近づこうと立ち上がる、が、その場に先客が居る事に気が付いた。

網戸まで開いた窓の向こう側、屋根瓦の上に龍児が座り、豪星に背を向けて外を眺めていたのだ。

「龍児君?」

その背に声をかけると、龍児がおもむろに振り返った。

寝起きの豪星とは違い、その目は確りと開いていて、何時も通りの鋭さを持っている。

時計を見るとまだ朝の5時だった。随分早いなと思いつつ、豪星も屋根瓦に身を乗り出し龍児の隣に座った。

「起きるの早いね」

多分自分は酒の所為で起床リズムがずれたのだろうと、苦笑する豪星の隣で、龍児がゆるく首を振った。

「違う」

「え?」

「一回夜中に目が覚めてからずっと起きてた」

首を振るのを止めた龍児が、また向こう側を眺め始めた。その目がすっと、何かを惜しむように細くなる。

「…なんか、やる気が起き無くて、ずっと外見てたんだ」

「……ふうん?」

「へんだな……」

何の話?と豪星が尋ねる前に、丁度真下にある玄関の扉が開く音がした。

ぱっと下に目線を落とすと須藤の旋毛が見えた。どうやら玄関から出てきたようだ。

頭上から「おはようございます」と挨拶をすると、須藤がびくりと肩を震わせ、きょろきょろとあたりを見回して、から、

漸く豪星達の居る屋根の上に目を向けた。

「なんだお前ら、はえーじゃねぇか」

「それはおっさんだろ」

間髪入れない龍児の突っ込みに、確かに、と納得してしまう。

言われた須藤も同じような事を思ったのか、まあな、みたいな顔で笑っている。

須藤は再び背を向けると敷地内にある倉庫に向かって行ってしまった。

立てつけの悪そうな扉をガタガタ開くと、中に入って、数分後、何かを手にして倉庫から出てきた。

取り出した物は白く、四角い、抱える程大きい発砲スチロールの箱だった。

須藤はそれを地面に置きながら「やっぱ此処にあったか」とか、「沙世が中にあるって言ってきかねぇから」とか、ぶつぶつ何事かを呟いている。

「壊すごみの日ですか?」

月に一度しか無いレアなごみの日を提示すると、こちらを見上げた須藤が「ちげぇよ」と否定した。

「何でわざわざ探したもん捨てるんだよ」

「えーと?」

「使うんだよ、今から」

そう言ってぱっと須藤はその場から離れ、今度は車庫に近づいた。

おなじみの軽トラックではなく、別の乗用車に乗り込み、先程居た場所に迄近づくと、一度降りてから地面に置きっぱなしにされていた

発砲スチロールを荷台に乗せた。

何かをしに行くのだろうなと、ぼんやり(多分龍児も)見詰めていると、再び車に乗り込もうとした須藤が、ふっと横を向いて、から、

こちらを見上げてきた。軽く手を振り、「おい」と呼びかけられる。

「折角早起きしたんだ、お前等も一緒に来るか?」

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