炎天の下、腰を屈ませ、ふ、ふ、と何度も息を吐く。暑さから流れた汗が頬の曲線をつたって地面に落ちた。
被った帽子は日避けにはなるが、却って暑苦しいのが欠点だ。
「昼だぞー」
田圃の隅に置いておいたペットボトルの中身を飲んでいると、畔道の向こうからコンバインの走る音と、須藤の叫び声が聞こえてきた。
傾けていた手を止め振り返ると、紫色の風呂敷を片手で抱えた須藤の姿が見えた。須藤はもう片方の手を上げると、来い来いと手招きをしてくる。
田圃を出て、ふらふらと須藤に近づいた途端、ばんばんと肩を叩かれた。痛い。
「よっ、お疲れさん」
「ふぁい…」
「よしよし一回飯食って来い、おーい、龍児!お前も休憩しろ!昼飯だぞー!」
もっと遠くで田圃の隅を刈っていた龍児が驚くべき速度でこちらに向かって来た。
相変わらずの仏頂面だが、目だけが爛々と輝いているように見えるのは気の所為だろうか。
近くの小屋が日陰になるからと場所の指示をした後、須藤は「じゃあなー」と言ってコンバインと共に去って行ってしまった。
自分も休憩をするのか、それとも再び仕事に戻るのか、どちらでも驚きはしない。
何せ須藤は毎日毎時間、驚く程ひたすらに仕事をしているのだ。下手をすると雨の日も仕事をしているかもしれない。
豪星と龍児の仕事量など戯れも良い所に見える程だ、農家って大変だとしみじみ思う。
早速小屋に向かうと丁度日陰になっている部分に背を預け、帽子を取り去った。
す、と深呼吸をすると、絶え間なく乱れていた呼吸が漸く落ち着いてきた。
ついでに帽子で風を起こし体温を下げていると、何時の間にか隣に座っていた龍児に「早く開けろ」とどつかれた、痛い。
「急がなくてもご飯は逃げないよ龍児君」
「腹減ったんだよ早くしろ」
「あーはいはい」
人でも殺しそうな形相で睨まれるが、涎が出ている時点で怖くないなと苦笑する。
須藤に貰った風呂敷の包みを開くと、中には大きめのタッパーが二つと水筒が二つ、カップが二つ入っており、透かしてみると中身はおにぎりとおかずの詰め合わせのようだった。
美味しそうだけどちょっと量が多くない?と疑問に思ってから間もなく、隣から延びてきた手におにぎりの方を奪われた。
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