「………っ、」

「猫汰さん?」

豪星の頭上でまた急に猫汰が顔を顰めた、今度はあからさまに顰めたので心配になり、自分も階段を上って上に上がる。

だが猫汰は既にけろっとした顔をしていたが。心なしか青くなっている気がして、じっとその顔を見詰めた。

「どうしました?気分が悪いんですか?」

「う、うーん、ちょっと喉かわいたかなって…」

「ああ、じゃあ行きましょうか」

「うん」

後りをざっくばらんに観賞してから出口に向かう。

途中、自販機を見つけた猫汰が財布を取り出し、硬貨を何枚か豪星に手渡してくる。

「ごめんダーリン、俺ちょっと先に出口行ってるね、飲み物買っておいてくれる?」

「え?ああ、はい、分りました」

「ゆっくり買ってねぇ」

手を振ってから背を向けると、猫汰はそそくさと出口の看板に向かって行く、不自然な動きだ、やっぱり気分が悪いんじゃないだろうか。

(じゃあ、甘い物よりお茶かな…)

独断で飲み物を選ぶと、それを二つ買って自販機から取り出す。

出口に向かうと途中で売店があった、コンビニと土産屋を足したような品揃えで、冷蔵庫には飲み物なども入っている。

(あ、こっちのがお茶が安い)

悔しげに売店を眺めていると、ある一点に目がついた。

「アレンジブーケ…」

植物園らしい売り物だ、しかも100円とか、安いな。

(…あ、これなら自分の金で買える)

何がと言えば、無論猫汰へのプレゼントだ。

誕生日に花とか安直だけど、逆に言えばセオリーだよな。けど女の人じゃあるまいし喜ぶか?いや気持ちだけでも、って事で良いのか?どうなんだろう。

まぁいいや、物は試しで渡してみよう、駄目なら駄目でまた何か考えよう。

売店の人に物を頼むと、少し時間がかかるという事で待たせて貰う事にした。猫汰にもその事を伝えようとして出口に入る、が、肝心の猫汰の姿が何処にも無かった。

あれ?と思い、くまなく辺りを探すが、やはり何処にもいない。

そんな事をしていると、先に次郎が猫汰の匂いを見つけたらしく、出口とは別の場所にたっと向かって行く、向かった先は入り口の方だった。

入り口付近で漸く見つけた猫汰は、何処か苦しげな表情で座り込んで居た。

やっぱり気分が悪かったのかと、声をかけようとした瞬間、目を見開く。

「猫汰さん!」

「………っ!」

呼ばれた猫汰も目を見開いて、ばっと豪星の方を向いた、しかし直ぐ、へにゃりと表情を崩す。

「へ、へへ…ばれちゃった」

「ばれちゃったじゃないですよ!どうしたんですかその足!?」

「ごめん、実は途中からちょっと、やばいかなーって、気合い入れて選んだ靴に噛まれちゃったみたい」

「冗談言ってる場合ですか!」

猫汰の足は皮が大きく剥け、見るも無残な程血塗れになっていた。血を止めようとしたのか、両手の平も真っ赤に染まっている。

一体どれだけ無理をしたのだろうか、こんな風になる前にひと言言ってくれれば良かったのに。

「ああもう」

とりあえず足を洗わねばと思い、洗える場所を探したが見当たらない。

「……あ!すみません、足とか洗える場所ってあります?」

少し向こうに居た従業員に尋ねると、不思議そうな顔をしながらも教えてくれた。早速戻って猫汰に「歩けますか?」起立を促すが、頷くも、辛そうだ。

「次郎、ちょっと待ってな」

「くーん」

心配そうに鼻を寄せる次郎をその場に縛って、ぐっと猫汰に近づく。

「ちょっとすみません!」

「うわ!!」

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