結局直ぐに赤くなってしまい、豪星は一杯と半分だけ頂いて止めておいた。

しかし、隣でひたすら飲んでいた猫汰は、最終的に何杯呑んだのか分からない具合だ。

瓶が最後には空になったので、多分相当な量には違いない。

「じゃあねーみつー、ごっちー」

若干ふらつきながらも、確りと意識を保っている猫汰に拍手を送りたくなった。

凄いな、俺なんかあれだけでもくらくらするのに。いやでも、やっぱり駄目駄目だな、俺も今日仲間入りしちゃったけど。

「お、お前!全部空けやがってこの野郎…!」

機嫌よく配膳していた光貴だったが、まさか全部呑まれるとは思っていなかったのだろう、最後には空になった瓶を抱えて真っ青になっていた。

「ぜってぇ手伝えよ馬鹿野郎が!」

「考えとくー」

「おまえぇええ!!!ざけん」

猫汰が飄々と応えた途端大音量の怒声が聞こえたが、既に出入り口付近に居た猫汰がばん!と扉を閉めたので、怒声は途中で切れて消えてしまった。

先に外に出ていた豪星は、閉められた扉を見つめながら、悪い事したかな…と、猫汰の代わりに反省していた。

名指しの怒りだったので、別に豪星が反省する事では無かったかもしれないが、一応自分もアレを頂いた一人だ、責が無いわけではないと思う。

今度必ず、改めてお礼を言おうと心に誓っていると、少し遠くで「だーりーん」と猫汰の呼び声が聞こえた。

振り向くと、何時の間にか猫汰が道の先を歩きながら手を振っていた。

「いっちゃうよー」

「あーはい、すみません」

「あはははは!気持ちいいね、ダーリン!」

酒が良く回っているのか、猫汰のテンションが何時もの1.5倍高く、口調は何時もの3倍緩かった。

これ以上緩くなったら溶けちゃいそうだなこの人、と、変なことを考えながら、先を歩く猫汰の後ろを付いていく。

暫くは猫汰が適当に喋り、豪星も合わせて適当に相槌を打っていたが、不意に、猫汰がぴたりと歩み止めた。

その間に追いついた豪星に、くるりと振り返ると、本当に溶けてしまいそうな程、ふにゃりとした笑顔を向けてくる。

「ねぇ、だーりん、みつがさ」

「はい?」

「なかよくなったって、言ってたねぇ、もしかして、おれたちラブラブなオーラが出てるのかな?」

「あはは、どうでしょ」

「出てるんだよぉ、この前行ったドックカフェだって、皆羨ましそうに俺達みてたじゃない、あまりのラブラブっぷりに顔赤くしてちらちらこっち見てたじゃない」

「いやあれは猫汰さんを…」

「あは!」

真相を口にする豪星を遮りながら、猫汰がすり寄ってくる。

腕を絡めて軽く見上げる様は、男にしては艶めかしいものだ。

「ね、ね、ダーリン、俺次また行きたい所あるんだけど、いっしょに行ってくれる?」

「んー…」

行こう行こうとしきりに進めてくるが、猫汰が金を出す前提の話なので、豪星に拒否する謂れは無かった。

男同士というのは最早考えても切りがないので開き直り済みだ。勉強も此処暫く頑張ったお陰か随分落ち着いて来ているので問題無い。

「良いですね、じゃあまた近い休み一日空けておきます、一応希望とかありますか?」

「うん、今度の土曜日が良い、大丈夫そう?」

「はい」

「わーい有難う!ダーリンとまたお出かけだ!楽しみだねぇ」

「……はい」

…正直に言うと、最近、猫汰と出かけるのが本当に楽しかったりもする。此処の所誰かと出かける事がほとんど無かった所為だろうが。

「今度は何処に行くんですか?」

「どーぶつえん!」

予想外を突かれてつい足が止まってしまった。じっと猫汰を見つめてから、はっと頭を揺らす。

…何で動物園に行きたいか何となく読めたぞ。

「…動物園って、猫汰さん」

「恋人同士ならいっとかないとー!」

やっぱりか。

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