目的の公園は、コンビニから歩いて数分も経たないところにあった。

猫汰の言うとおり犬が一杯歩いたり走ったり、休憩したりしている。

近所にこんなところがあったんだなぁと感心しながら、リードを長くした次郎を公園の傍にまで連れてくる。

次郎は、何度か公園の隅に鼻をこすり付けて警戒を見せたが、やがて中に入ると楽しそうに走り出した。

次郎が満足するまで一緒に走り周った後、汗だくになった身体で花壇に座り込む。

「ダーリン、はい」

「…あ、どうも」

何時の間にか両手に飲み物を持っていた猫汰が、片方を豪星に手渡してきた。

ついでに隣に座ると、猫汰は自分の缶のプルタブを開け、その口に口を押し当てた。ごくり、と飲み込むと、彼の喉に汗が伝う。

「なぁに?」

意味も無く見つめていると、何時の間にか振り返っていた猫汰にゆるく尋ねられた。

「いえ…美味しそうだなと思って」

「あ、こっちが欲しかった?別にいいよぉ」

「いえ、自分の分は頂いたので」

「えー?いいのにぃ」

けらけら笑う猫汰の足元で、急に次郎がすくっと立ち上がった、どうやら休憩を終えたので、もうひとっ走りしたいという合図らしい。

貰った缶をその場に置いて、次郎に付き合おうと立ち上がる、が、突然横からリードを奪われた。

振り向くと、首をこてんと下げた猫汰が「おれもやりたいなー」と、強請るような目でこちらを見ていた。

「ダーリンばっかりずるいやぁ、俺もじろーちゃんと走りたいなぁ」

「え?けど…」

「いいんだよぉ?」

疲れちゃいますよ、と言おうとして先に塞がれた。暗に、お前は疲れてるんだから休んでろと言われたような気がした。

「んじゃぁじろーちゃん、今度は俺と走ろうか!」

「きゃん!!」

次郎が嬉しそうに鳴き、リードを持った猫汰が豪星の目前を走り去っていく。

日差しの中、屹度暑いだろうに、それでも楽しそうに猫汰は次郎と戯れていた。

暫くは大人しく木陰に居たが、その内立ち上がって自販機に向かった。

既に無くなってしまった自分の分もそうだが、今走っている猫汰は今以上に水分が居るだろう、同じ炭酸を二つ買ってベンチに戻ると、丁度休憩に戻った猫汰が腕で額の汗を拭っていた。

「猫汰さん」

「あ、ダーリン」

「どうぞ、お返しです」

「あー、嬉しい、ありがとう」

「いいえ、こちらこそ、有難う御座います」

笑顔で猫汰に缶を差しだす、しかし猫汰は直ぐに受け取らず、何故か茫然と豪星を見あげていた。

「…猫汰さん?」

「…今のダーリンの顔好きだなー」

「え?」

「すごくかわいかった」

咄嗟に顔に手が伸びた、何度も手で顔中を擦り、表情筋の状態を確かめる、とても不気味な褒められ方をされたので、今自分がどんな顔をしていたのか物凄く気になったのだ。

かわいいとかどれだけ気味の悪い顔をしていたんだろう、正直、鏡で確認したい所だ。

「おいしいねー」

目を白黒させている豪星の隣で、当の元凶はとても機嫌が良さそうに、貰った炭酸を飲み干していた。

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