何時の間にか呼ばれていたらしく、豪星は勢いよく顔を上げた。

すると、ぷくっと頬を膨らませた猫汰が、「もー」と不満げな声を漏らした。

「食後にぼーっとしてると、牛になっちゃうよぉ」

「…そんな可愛い変化で済むのかな」

「ん?」

「いいえ、なんでもないです、それよりどうしたんですか?」

「そうそう、ねぇダーリン、今度の土曜日って一日空けられる?」

「土曜日?」

「だってダーリン土日も学校に出かけてるんだもん!…ほしゅーなんかしないで俺と一日いちゃいちゃしてれば良いのに」

「はぁ…すみません」

また倒れると心配だから、暫くバイトはやらないで欲しいと雇用しゅ…恋人が言うので、豪星は暫く休暇を取ることにしていた。

すると、自分の為に使える時間が増え、これ幸いと豪星は勉強をし直していた。

バイト三昧の影響で成績が下がった事に少なからず不安を抱いていた。

しかし時間が出来たのであれば此処らで遅れを取り戻したかった、そうすれば、来期を迎えても有る程度は安心出来るだろう。

学校には決められた時間しか拘束されていないし、きちんと猫汰との時間も作っている、だからこればかりは見逃して欲しい所だ。

「まぁ、勤勉な所は真面目なダーリンらしくて大好きだけど」

おっと、今唐突に補習を止めたくなったぞ。

「…まぁ、土曜の一日くらいは空けても構わないですけど、どうしたんですか?」

「え、ほんと!やったぁ!じゃあその日一日デートしようよ!!」

「はぁ…デートですか」

意味はきちんと分かっているものの、豪星の口からは他人事のような声が出た、まぁ、実際他人事と大差ない状況なのだが。

しかし、デートか、男同士でデートか、人生初の俺のデートがホモデートか、いやぁ、勘弁してほしいなぁ。

猫汰と自分が、仲睦まじく手を繋いで、周りを気にしながら恥ずかしげに歩いてる姿なんかを想像して、げっそりした。

流石にそれは嫌過ぎる、自分がやると思うと余計に。

漸く他人事から実感を掴み、豪星はぐるぐると考え事を始めた。無論、この展開をどう避けるかについてだ。

「あの、でも…」

「お金は全然かからない所行くから、かかっても俺が全部出すから」

「…いや、でも、一日出ちゃうと…」

「大丈夫だよ、次郎ちゃんがさびしくないように、次郎ちゃんも一緒に行けるとこいこうね?」

「…すよねー」

断るための一番有力な線達を取り上げられ、豪星は脱力してしまった。

不味いぞ、このままだと今度の土曜がホモデート日になってしまう。

「ぐるっと近所の公園を散歩しようよ、俺、犬がいっぱい散歩してる公園しってるんだぁ、ダーリンわんちゃんすきだもんね?で、お昼はさ、次郎ちゃんも入れるとこで御飯食べようよ、ランチ代なら俺が出すし、ダーリンは横に居てくれるだけでいいからさぁ、ねぇ?ねー?次郎ちゃんも行きたいよねー?」

「きゅーん」

「はぁ…」

犬が一杯居るたって、別に次郎が可愛いんであって犬全般が好きな訳でもないんだけどなぁ。

ていうか、何時の間にか出てきてた次郎を味方につけてるし。くそう、あんまり良く分かって無さそうな次郎が超可愛い。

しかしまぁ、想像以上にバカップルなデートプランだ、男二人でドッグランした後ランチとか俺どんだけなの?

………ランチ?

「…猫汰さんデートしましょう!!」

「うぇ!?」

「俺猫汰さんと是非デートしたいです!土曜は猫汰さんの為に絶対空けときますから!!」

「ほ、ほんと?」

「はい!絶対デートしましょうね!?一日出かけましょう、それで、外で一緒に飯食いましょう!!」

「あ、でもお昼は公園でお弁当って手も…」

「いやいやいや何時も作ってお疲れでしょう!!たまには外で食べましょう!?ね!?休んで下さい!ね!?」

「だ、ダーリン…やさしいっ」

「いやいや彼氏ですから!当然ですよあーははは!」

驚く事に外食と聞いた瞬間メーターが振り切れた。

多分今の自分は、例え一日、もしくは一食だけだとしても、食事に負担をかけない為ならどれだけでも優しくなれる気がした。

自分の許容範囲だとか踏み越えたくない線だとかホモデートの嫌悪だとか、そんなものまともな飯の前ではゴミ屑同然になっている。

ちっぽけなプライドよりも、目先の外食を優先したい、飢えている、といっても過言では無い。

だからもう。

「じゃあ決定って事で!」

どうにでもなってしまえ!!

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