「んっ……、」
キスをしている最中に、触れたままだった両手に上も下も脱がされそうになって。
「ま、まってっ」とっさにその手を掴んでとめた。
「ちょっとまって。やっぱ……ちょっとこわい」
いくじのないお願いをすると、相手の探る手が止まった。
呆れられたかな?と、若干不安に思いながら相手を盗み見ると。さほど気にした様子もなく、「ふうん。そうか。……どの辺までだめなのかな」横を向いてなにやら呟いた。
そして。「よし。試す段階をもっと下げよう」なにやら本人の中で合点をつけると、突然、サノトの両肩を掴み、ソファの上でぐるりと半回転させられた。
「うわ!?」驚き引きつった身体の後ろにアゲリハが入り込み、サノトを背後から抱えるような形になった。
「ちょっと触るだけにしよう。それ以上はなにもしない。それなら続けても良いか?」
「う、うん……」良いかもどうかもほんとのところ分からないんだけれど。雰囲気にのまれて頷いてしまう。
そのまま、男二人で縦に並ぶには狭すぎるソファの上で、アゲリハは自分の服を探ってなにかを取り出した。
それは、アゲリハの手のひらに収まる大きさの容器だった。
中にはどろりとした液体が入っていて、アゲリハがそれを揺らすと、中身がゆるやかに動く。
「なにそれ?」サノトがそれを見て質問すると。
「化粧油だ。私が化粧水と一緒によく使っているやつ」
「ああ。あれか。
男なのにそういうのつかってるとかすげーなって前々から思ってたんだよね。
美人だと顔の手入れ大変だね?」
「別に顔の造作は関係なく、手入れは適時したほうが良いと思うがなぁ」
「そんなもん?
で、話が戻るけど……なんでそれを今持ってるの?」
「ああ。うん。情事の際に使おうかと思って。小分けにしたものをずっと持ち歩いていたんだ」
「えええええ」
「その内どこかでそういう雰囲気になるかなと思ってたんだが。早々に出番が来たようだ」
「えええええ」
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