「へえ」よくわからないことをつきつめるとこんな感想しか出ないんだな。初めて知ったわ。
「というわけで、俺の旦那さまになってね」
「こまります」
「もー。命令してもいいけど感情までは操れないからなー。
俺知ってるんだからね。文明を築くレベルの生き物は感情っていう無駄な行動で恋愛するんでしょ?」
無駄って言ってるのに操りたくないと言っている矛盾について。
「わかったわかった。とりあえず結婚しよ?感情はあとからついてくるよね」
このひとがなにを理解したのか1ミリも理解できない件について。
「ただ、俺、オスで作られちゃったからこの国では結婚できないね。
実家行こうか。あっちなら性別かんけいないし」
おっと!宇宙に誘拐される流れに入り込んだ!
冗談じゃないぞ!どうする俺!
とりあえず話を合わせてごまかそう!
「結婚は気が早いと思います」
うん。もうちょっとましなごまかし思いつかなかったのかな俺。
「そうか!結婚すると恋人であることを楽しめないよね!」なんで食いついてんだこのひと。まあいいけど。
「あっはっは。そうなんですよ。ですので誘か……結婚は当面やめておきましょう」
「うんわかった!
じゃあ同棲からはじめよう!」
「はっはっは」誘拐は阻止したけど寄生は逃げられなかったか。
そうと決まれば俺の生活道具がほしいというので、いっしょに買い物にいくよう命令された。体が勝手に動く最中。「恋人同士なら命令するのは本来でないのでは?」と言ったところ、「あ、そっか」初めて気づいた。みたいな顔で謝られた。
「ごめんね。俺、いろいろ学習はしてるんだけど、生まれたての赤ちゃんみたいなものだから、生き物として分からないことあったらいろいろ教えてね」
ということは、教え方次第では別離可能の希望があるということか。
おかしなことに巻き込まれたってことには変わりないけど。
理不尽を怒るより、まずは命と常識、大事。
「わかりました」
とりあえず頷いてから、豪星は道具を買いに行く途中で決心した。
説き伏せてとっとと追い出そう。
おしまい。
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