「うんそうだね。つがいの認識には個人差があると思うよ。豪星くんは特にね。
だからその個人差の話を、もうちょっと掘り下げていいかな」
「……なにが?」
「君の知らないオルファのはなし」
すっかり、父親のペースに飲まれた猫汰が、父親から中嶋家の特異体質の説明を受ける。
はじめは唖然と、徐々に真面目な顔つきになって、話を聞き終えた彼が、最後に髪をかきあげて。
「へー……」感心のような、呆れたような、複雑な息を漏らす。
「俄には信じられないんだけど」
「うん」
「……でも、こんな話つくってわざわざ、つがいの俺に嘘をつく理由がないよね」
「そうだね。だからこれは真実だよ」
「……そっか。俺のつがいって特殊なんだ」
そっかぁ。せっかく会えたのになぁ。
やっぱりこの人だってわかったのになぁ。
ものすごく残念そうな溜息をついたあと。一転。ぐ!と手をつかまれる。なにごと!?と思いきや。
「分かった!じゃあ恋人からはじめよう!」
「へ!?」
「ようするに、豪星くんが俺のアルファになるまで、俺が色々頑張ればいいってことでしょ?まあせっかく見つけたつがいとセックスがしばらく出来ないっていうのは非常に残念だけど、長い目で見て俺の彼氏を育てると思えば、そう悪くない気がしてきたよ!」
「おお。アクティブな彼氏が出来てよかったねー豪星くん」父親がのんびりとつぶやく。いやいやちょっとまって!?俺の同意なしに話すすんでない!?
豪星の、助けを求める視線に気づいてか、父親がさりげなく。
「これでようやく、オルファの性器をどうにかできるね」
ひと言はなった言葉に、はっと気づく。
そうか。この人と付き合えば、俺の悩みであるオルファは数年後解消されるかもしれないのか。
誰と付き合おうとかそもそも誰か付き合ってくれるのかとか、そういうところで悩まなくてよくなったのか。
あわよくば、好きな人でもできればいいなーなんて、ちょっぴり思ってたんだけど……。
「……まあいいやこの際!」
これも俺の身体のためだ!贅沢は言うまい!
実感はまったくないけど、彼がつがいだっていうなら効率もよさそうだ!
「よ、よろしくおねがいします!えーと、猫汰さん!」
「まかせてー!」
お互いの手を取り、ようやく意見の合致を得る。
「はっはっは。それじゃーあとはお若いおふたりで楽しんでってねー」
父親が立ち上がり、「パチンコいってくるー」外へ出ていく音がする。
言葉通り二人きりになると。手をほどいた猫汰が。
「それじゃあさっそく!」いきなり豪星を押し倒した。
え。なにごと。
「今できることは全部やっておこう!」
「……なにを!?」
「だからさー!豪星くんが欲情しなくっても、できることいっぱいあるじゃん?それやっとこうよ!いま!」
「いま!?
ちょ、ちょっとまってください!つき合って数秒後にそれはどうかと思います!」
「体にハンデがあるなら!多少強引に勧めてったほうが絶対良いって!」
「そうかもしれないけど!待って!ちょっと待って!俺は身体よりも気持ちが追い付かない!!」
「大丈夫!その分俺がフォローする!」
「そういう問題じゃない!!ちょ!……あ……だめーーー!!まってーーー!!」
俺のつがい強引すぎだろ!!
目先の都合よさに目がくらんで、早まったかなーー!と。
後悔するも、後の祭りである。
おわり
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