「で、どう?」

「最後のしめかたがこえぇっす」

「ばかやろう。そこはな?俺たちが気持ちの上でもずっといっしょにいられるっていう伏線であって」

昼休憩の時刻。弁当を食べていた豪星たちのもとに遊びにきた後輩三人組のうち二人が、「ちょうどよかった」の一言で猫汰につかまった。

なにがちょうどよかったかと言えば、へんじとけんじが持っている紙束のことだ。

猫汰いわく、週明けに、「昨日の休みに恋愛ドラマを見ていたら、気分が盛り上がったので恋愛小説を書いてみた。ハロウィンが近いのでそれも付け加えてみた」とのことだ。

どこからつっこんでいいのか分からなくなったけど、とりあえず、小説なんて書けるんですねと尋ねたところ。「俺、一時期めっちゃ小説の投稿にはまってて」相変わらずの多才ぶりがまたひとつ露見した。

豪星は昨日のうちに借りて(感想欲しいから一日で読めとのことだったので)読み終え、今朝返したばかりだ。

彼氏ご期待の感想と言えば、そもそも俺主役、彼氏ヒロインなので、「複雑です」としかいいようがなく、けれどそんな感想はお望みではないと思うので、無難に「おもしろかったです」とだけ言っておいた。

その流れから、昼休憩に捕まった後輩たちと言えば、へんじの方はよく本を読むらしいので、案外乗り気に、けんじと言えばまったく本を読まないので、嫌々、それもざっくり読み進め、つい先ほど読了した。

後輩ふたりは、現在、読んだ感想を赤裸々に語っているところだ。

「つうか、イケメン先輩が龍児と和解してるとか、意外なんすけど」

それは俺も思った。

「ああ、それ?俺もねー、そんな風にするつもりはなかったんだけど、その展開がいちばんしっくりきちゃってさー」

猫汰いわく、もともと龍児を出す気はなかったのだけれど、この話には友達のジャックオランタンが必要であり、その配役がどうしても、龍児以外思いつかなかったらしい。

嫌々出したけど、まあそこそこ良い味にはなったねと、言葉の割りに満足げだ。

「それに、りゅーちゃんに俺たちの挙式を祝ってもらうっていうのは、ちょっと気分いいよね?」

「相変わらず性格わるいっすね」

「俺、ダーリン以外はなにがどう良くても関係ないと思ってるから」

うーん。現実も小説も、猫汰さんは猫汰さんだなぁ……。

「おいりゅーちゃん。そんなむしゃむしゃメシ食ってないでお前も読んで見ろよ。感動して泣いちゃうかもよー?」

それまで、双子と猫汰のやりとりには一切関与せず、弁当をほおばっていた龍児に猫汰が小説を投げてよこした。

じろりと、猫汰をひとにらみした後、龍児はひょいとそれを拾って、ぺらぺら、中身を眺めたあと。

べりっとやぶり、食事に汚れた口をふき始めた。

「あ!てめぇ!なにしやがる!」猫汰がイスを蹴飛ばすも、龍児の手はとまらない。

「先輩がわるいんだよ」へんじが、あーあと、猫汰の背に話しかける。

「よりにもよって龍ちゃんに小説なんて読ませようとするから」

「そうだぞ先輩。龍児は勉強のなかでも、とくに国語が死んでるんだからな」

「やっかましいわ!

あ、こら!りゅーちゃん!二枚目破るな!鼻をかむな!

あーーーーーー!」

「ははは……」

今日もにぎやかだなぁ。



おしまい。

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