「…父さん、とうさん、おーい、父さん!どうしたの!」

何度も呼びかけると、漸く、父親がはたと、目に焦点を取り戻す。

やっと、そこに豪星が居た事に気付きました、みたいな顔で息子の顔をまじまじ眺めると、数秒してから、ははっと乾いた笑いを零した。

「あれ、いや、ごめん豪星君、ちょっとぼーっとしちゃって…」

「大丈夫?飲みすぎたんじゃない?」

「そうかも、…あの、ところで、さっき豪星君と話してた子って…」

「え?ああ、覗いてたの?友達だよ、ほら、前からよく遊びに行ってる」

「そう、なんだ、そっか…」

「とうさん?」

「…ごめん、昔の友達に似てるような気がしたんだけど、多分気のせい」

浮わつく顔で、しどろもどろに応える父親の姿が、今までに見たことの無いものだったので少し面食らってしまう。

それに、父親の友人の事を聞かされるのも初めてだ。

「父さんにも友達がいたんだね」

「…ああ、うん、まあね」

「へぇ、そっか、じゃあ、今日はその話が聞きたいな、あ、そうそう、友達が、今日誕生日だからってお菓子くれたんだよ、たくさんあるから父さんも一緒に食べよう」

「………」

何時もならば、「おっけー!」と調子の良い声で賛同する場面なのだが、豪星の想像に反し、父親は、すっと黙り込み、次いで、首を左右に振った。

「ごめん豪星、僕もう寝るよ」

「え?」

「あはは、急に眠くなって来ちゃった」

父親が具合の悪そうな顔で奥に引っ込んでいく。その背中が妙に不安定で、少し心配になった。

その背に声を掛けようとするよりも先に、父親が絶妙なタイミングで振り返る。

「おやすみ、豪星君」

「う、うん、おやすみ、父さん」

「………うん」

不意に、部屋の真ん中で立ち止まった父親が、同じく中に戻ろうとしていた豪星の方へ。

いや、そのまた後ろ、背後の扉へ、大きくそって振り返り、そして。

「まさか…………ね」

とても小さな声で、ぽつり、何かを呟いた。

【覚醒編/ふた編完】
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