連日続く蒸した夜に、からりと戸の開く音がした。ふと目を覚まし、目線だけをを戸のほうへ向ける。
戸には影が絡まっていて、それが時折ぴくりと動いては、月明かりに照らされる。
豪星よりも先に眠っていた筈の龍児が、感情をすとんと無くし、横顔を薄い光に照らされている。
つい数時間前に、誕生日の席で羽目を外していた人物とは思えないような表情だった。
珍しく、楽しさを隠さなかった龍児からは考えられない程大人びた表情だった。
「どこに、どこにいるんだ、でてこいよ、なぁ、でてきてくれよ、じゃないと……あたまがおかしくなりそうだ」
淵に足をかけ、床に着地すると、何時の間にかしぼんでいた布団に彼が潜り込む気配がした。
(…本当に探してるんだ)
先日、目を覚ました時の事を思い出す。
あの時も彼は、夜更けに人を探しにいっていたのだろうか。
見つからず、今みたいに感情の無い顔を浮かべながら寝たのだろうか。
…彼は、何を、誰を探しているんだろうか。
多量の興味が浮かび、暫くは思い馳せていたが、やがて睡魔に食われ、何もかもが消えた。
その日の夜、懐かしい夢を見た。
【後編完/シリーズに続く】
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